帆布生地の種類と特徴
【プロ担当の専門情報】ご購入前に知っておいていただきたい、トラックシート豆知識を多数掲載しています。
帆布生地の種類や特徴についての豆知識。帆布は素材ごとに異なる特徴をもっており様々な用途で活用されています。
- この豆知識の目次
- 帆布(はんぷ)とは
- 帆布の素材とその特徴
- 綿帆布
- 麻・リネン(亜麻)帆布
- エステル帆布
- フラット帆布
- 帆布の厚みを表す号数とは?
- 海外での単位
- 号数による厚さの違い
- 帆布の用途
- トラックシート
- レスリングマット
- ベルトコンベヤ基布
- 担架・ストレッチャー
- バッグ類・雑貨
帆布(はんぷ)とは
帆布(はんぷ)とは平織で織られた生地のことを指します。その名の通り、帆船の帆として使われていた経緯から帆布と呼ばれるようになりました。厚手で丈夫な生地で水漏れしにくいため、牛乳配達などの業務用バッグとしても使われていました。
英語ではcanvas(キャンバス・カンバス)。木枠に張られた絵画のキャンバスや、帆布生地のトートバッグをキャンバスバッグと呼ぶこともあり、身近なところでもその名前を聞くことが多いでしょう。
現代でもっとも身近な帆布といえば綿素材(コットン)のトートバッグなどで、日常生活に溶け込んでいますが、実は帆布の素材は綿に限りません。用途もさまざまで、意外なところに帆布が使われています。この記事では、代表的な帆布の種類やその特徴についてご説明します。
帆布の素材とその特徴
綿帆布
綿素材の帆布生地は、撥水性と通気性をあわせもっています。帆布そのものが水を通しにくい構造になっており、濡れると目が詰まることで、防水加工をしていない生成りの生地でも、ある程度水を弾いてくれます。染色・加工をしていないキバタ生地は天然素材のため、お子様が触れても安心で、食品工場などでも利用されています。
麻・リネン(亜麻)帆布
リネンは麻の一種で、フラックスという亜麻科の植物から作られる天然の植物繊維です。綿よりも吸水性と速乾性にすぐれ、サラサラとした感触です。綿素材よりもさらにシワ感の出る生地で、ジャケットなどのアパレル製品のほか、クッションカバー、椅子の座面などファブリック素材のインテリアに用いられています。
エステル帆布
トラックシートとして古くから使われていた綿帆布にかわり、防水性・耐久性・防カビ性などを求めポリエステル素材で作られた帆布です。綿帆布は徐々に防水加工が落ちていきますが、エステル帆布は素材そのものが異なり、メンテナンスも容易です。トラックシートに限らず、資材カバーや雑貨などにも利用されている汎用性の高い帆布生地ですが、耐候性がない生地はオーニングテントや駐輪場のテント屋根としての利用には不向きです。
フラット帆布
エステル帆布と素材は同じで、ポリエステル基布に塩ビ加工を施し、表面を滑らかにした生地です。完全防水で強度の高い生地は店舗の軒先テントや工場・倉庫の屋外に面した開口部などでカーテンとしても使用されています。ツルツルとした生地のため、雪が積もりにくい、積もった雪も落としやすいなどのメリットがあります。エステル帆布同様にトラックシートとしても利用されいます。
帆布の厚みを表す号数とは?
綿帆布の厚さは慣例的に「号」で表されています。
織り糸1本に使われている原糸の本数によって生地の重さが異なってくるため、1平方メートルあたりの生地の重さで号数が分かれています。もっとも重い(厚手)生地が1号、以降数字が大きくなるごとに薄手になります。
以前はJIS(日本産業規格※1)で定められた基準がありましたが、1997年に廃止(JIS L3102)されています。(※2)
しかし、現在も当時の基準に則って帆布を生産している企業が数多くありますので、厚さの目安として参考にしてください。
リネン帆布は素材が全く異なるため綿帆布の号数には該当しません(※3)。
標準的な綿帆布の号数
サイズ | 原糸 | 密度(本/inch) | 重さ | |||
---|---|---|---|---|---|---|
号数 | 番手 | タテ糸 撚り合わせ数 |
ヨコ糸 撚り合わせ数 |
タテ糸 | ヨコ糸 | g/m2 |
1 | 10 | 7 | 8 | 28-32 | 18-22 | 1014 |
2 | 10 | 7 | 7 | 28-32 | 16-20 | 941 |
3 | 10 | 6 | 6 | 28-32 | 19-23 | 867 |
4 | 10 | 6 | 5 | 29-33 | 18-22 | 794 |
5 | 10 | 4 | 5 | 32-36 | 23-27 | 720 |
6 | 10 | 4 | 4 | 32-36 | 23-27 | 647 |
7 | 10 | 3 | 4 | 34-38 | 24-28 | 573 |
8 | 10 | 3 | 3 | 34-38 | 24-28 | 500 |
9 | 10 | 2 | 3 | 44-48 | 33-37 | 510 |
10 | 10 | 2 | 2 | 45-49 | 34-38 | 428 |
11 | 10 | 2 | 1 | 43-47 | 39-43 | 343 |
※1 以前は日本工業規格と呼ばれていましたが、法改正に伴い2019年7月1日より改称されました。
※2 2021年5月現在、対応するISO等の国際規格はありません。
※3 麻帆布は2021年5月現在もJIS規格があります(JIS L3402)
海外での単位
海外では同じく重さを基準として「オンス(oz)」という単位が使われています。
1ozは約28.3g/yd2 、1yd2は0.84m2で、10ozがだいたい11号程度となります。
ただし、海外製や安価な帆布生地の中には、原糸を縒り合わせた糸ではなく太いだけで強度の劣る1本の糸で織ったものもあり、品質に差があるため注意が必要です。
号数による厚さの違い
11号帆布はもっとも薄手で、エプロンやジャケットなどの衣料品、キッチンサニタリーや収納等のファブリック製品など、身の回りのありとあらゆるものに利用され、生活に溶け込んでいるポピュラーな生地です。
10号帆布は標準的な厚さですので、薄手の11号と比較すると強度があり、トートバッグなどの一般的な製品に利用するには十分な厚さです。
9号帆布になるとしっかりとした厚みが感じられます。柔道着などに使用されています。
8号帆布や7号帆布は、家庭用ミシンでは縫えない程度の厚手で、工業用ミシンを用いても折り返し部分など生地が何枚も重なるような縫い方が難しくなってきます。アウトドア用のリュックサックなど耐久性が求められる商品に使われることがあります。
機材など重たいものを運搬する大容量の業務用バッグなどを製作したい場合は、引き裂きに強く丈夫な6号帆布をおすすめいたします。
5号以下の超厚手の帆布を日常生活で目にする機会はあまりないかもしれません。トラックシートとしての利用用途で、5号、4号のエステル帆布が比較的よく用いられます。
帆布の用途
トラックシート
古くは防水加工を施した綿帆布がトラックの幌や荷台カバーとして使われてきましたが、現在はエステル帆布やフラット帆布などが主流になっています。走行時、風によるバタつきなどで磨耗したり、雨に晒されたりするため、より防水性が高く耐久性にすぐれた強ポリエステル基布の帆布が使用されるようになりました。
綿帆布は完全防水ではない反面、その通気性をいかして生鮮食品や花卉の運送トラックのトラックシートとして利用が続けられ、今でも根強い需要があります。
レスリングマット
レスリングやボクシングのリングマットとしてエステル帆布やフラット帆布が利用されています。自宅での練習用として、床に敷くために綿帆布を使用するケースもあります。
試合用のリングだけでなく、体操マットのカバー、跳び箱、野球のホームベースなど、実はスポーツ用具にさまざまな素材の帆布が使用されています。
ベルトコンベヤ基布
工場や物流センターなどで目にするベルトコンベアは、ゴムでできているイメージが強いかもしれません。ベルト部分はナイロン製帆布やポリエステル製帆布などを基布として、ゴムを張り合わせた層になっています。スチールなど金属で作られているコンベヤベルトもありますが、帆布ベルトが主流で、難燃性のゴムを使用したものなど種類も豊富です。
担架・ストレッチャー
救急搬送用の担架・ストレッチャーにも綿帆布が使用されています。ウレタンなどを使用したレスキューマットのように大掛かりなものではなく、折り畳み式の簡易的なものに9号帆布の張り地が使用されていることが多く、コンパクトに収納することができるため、駅の売店横やオフィスなどの狭い場所にも設置されているのを見かけることがあると思います。
バッグ類・雑貨
もっとも身近な帆布製品に、バッグ類・雑貨があります。
厚手の6号帆布などは、重たい資材の運搬用バッグや工具などのツールケースとして業務利用されていることも多く、アウトドア用品としてもメジャーな生地です。
一風変わったところではバケツ型の綿帆布バッグが、生コンの漏れ受け用途で利用されていることもあります。乾きやすく扱いやすいため適しているようです。
そのほかにもリュックサック、ジャケット、収納カゴ、棚などの目隠し、キャスケットのような帽子類、ペンケース、コスメポーチなど、ほんの少し意識して周りを見てみると、帆布製品が溢れていることに気づくでしょう。